賃貸と防音。
これは言わば水と油のような永遠のテーマのようにも感じます。
もちろん賃貸物件でもRC造などでがっつりと防音室のある部屋もあるでしょう。
しかし、どうしても防音室のある部屋を選べないような場合だってあります。
立地も大事ですし、家賃もそうですし、安全性もやっぱり気になります。
うまく妥協できたり納得できたりする物件があればいいのですが、なかなかそうもいきません。
防音室は、楽器を使う方や、音楽や映画が好きな方にとって憧れの空間でもあります。
なんとか今住んでいる賃貸にも作りたい!
そんな方のために今回は、よく行われているような方法を列挙していこうと思います。
また、それを実行するための難易度を3段階で示していきます。
目次
リフォームして防音室を作る 難易度★★★
賃貸の部屋でよく行われている方法とは言えませんが、一番防音効果が期待できる方法として一般的なのがリフォームです。
持ち家のマンションや一軒家で特にこの方法がとられます。
ガッツリした防音室をリフォームで作れば、トランペットをかき鳴らすことだってできるでしょう。
賃貸の部屋でも大家さんの許可さえ出ればリフォームもできないわけではありませんが、許可をもらえるかどうかというのは全くの未知数です。
たとえもらえたとしても、退去の際は原状回復するように言われることもあり、それらもトータルして考えると費用がかかってしまいます。
家主さんによってはそのままでいいと言われることもないとも限りませんが、そう期待できることでもありません。
リフォームの方法
とにかく大家さんの許可はクリアしていざリフォームしようとなるとします。
具体的に防音室のためのリフォームがどのように行われるかというと、床、壁、窓、天井、ドアに対して、遮音効果や吸音効果の高い素材のものを貼り付けたり取り付けたりしていくという方法になります。
床だけとか、床と窓だけとかだとそれなりに費用は収まるでしょうが、防音室というからには、部屋を丸ごとリフォームすることになります。
そうすると数百万円ほどかかったりします。
ずっと住み続けられるのなら、お金をかけても無駄にはなりませんが、賃貸の場合、先ほどもふれたように原状回復しなければならない場合もありますし、大規模な修繕や建て替え、または取り壊しのために退去を迫られる場合もあります。
そういったことを考えると、あまり得策でないようにも思います。
組み立て式の防音室を使う 難易度★☆☆
組み立て式の防音シェルターとか防音ボックスとか言われるものもあります。
大きさも様々あり、証明写真を撮影するボックスくらいの大きさのものや、
2,3畳あるようなもの、人一人が座れるほどの大きさのものや様々です。
仕様も色々で、防音効果も低いものから高いものまであります。
費用は数十万円のものから数百万円のものまであります。
壁や床に穴を開けたりして固定する必要がないのなら大家さんの許可もいらないでしょうし、簡単に設置できます。
組み立てには業者さんの助けが必要なものと、自分でできるものとがありますが、どちらにしても組み立て式なので引っ越してもまた使えなくもなかったりします。
大家さんとの交渉とか煩わしいことを避けたいけれど防音室が欲しいという時、この方法が最も防音効果に優れた方法になります。
しかしながら、注意したい点もあります。
防音性重視の場合は高くなる
防音室が欲しいと思ってこのブログを読んでくださっている方の場合、高い防音性を求められているでしょう。
そうするとやはりかかる費用も高くなります。
低価格で簡易的なものになると、どうしても防音効果も低くなるので注意が必要です。
コンセント、照明、換気口がないものも
電気系統の設備がついていないものも多いです。
延長コードを引き込むと何らかの照明も使うことができますが、オーディオ機器をたくさん使う場合は不便を感じるかもしれません。
また、換気口やエアコンの吹き込み口がないと、暑さ寒さに苦しむでしょう。
これらはオプションパーツとして付けられる場合もあるので、そのあたりのことを必ずチェックする必要があります。
自分で防音室を作る 難易度★★☆
自分で作るとなると寸法をしっかり測ったり材料を揃えたり、手間はかかりますが、ここまでの方法の中で一番低価格で抑えやすいです。
必ず原状回復ができるように、壁や床に穴を開けないようにしたり、貼り付けるにしてもはがせる接着剤などで固定したりするならば、大家さんの許可も必要ないでしょう。
防音効果については、出来栄えや使う素材によってもまちまちになります。
方法としては2通り考えれます。
①一室を防音仕様に 難易度★★★
例えば賃貸のワンルームの部屋を丸ごと防音室にしたいと思う場合、やはり自分で作るには限界があるので、防音仕様という具合になるでしょう。
防音効果についても生活音の防音効果は見込めますが、それほど完璧なものは望めないでしょう。
やはり、防音対策を施すのは床、壁、窓、天井、ドアになりますが、どういった方法があるかを具体的に説明していきます。
●コルクマットが使われることが多い
感想(1113件) |
よくてっとり早く使われるのがコルクマットなどのジョイントマットです。
他の方法に比べて低価格で済むので、広範囲に防音対策を施したい時にも向きます。
コルクマットには振動や衝撃などを吸収する働きがありますが、それと同時にそれによる振動音や衝撃音を抑えてくれます。
ですので床にコルクマットを敷き詰められることが多いのですが、中でもできるだけ厚みのあるコルクマットだと効果的になります。
やはり厚みが出るとその分だけ振動や衝撃を吸収することができます。
場合によっては、コルクマットを2重に敷いてより効果を高めようとされる方もいらっしゃいます。
さらに、床だけでなく、壁や天井にも貼り付けて使われることがあるようです。
貼ってはがせるタイプの接着剤や両面テープもあるので、それもできなくはありません。
衛生的な問題が
ただ、コルクマットなどのつないで使うジョイントマットは、どうしてもそのつなぎ目からホコリやチリ、こぼしたジュースなどが入り込んでしまったりします。
また、梅雨などの湿気の多い季節や、冷暖房を使って部屋と外気との寒暖差が激しくなってしまう季節は、コルクマットの下にも湿気が発生してしまう場合があります。
ホコリや湿気を放っておくと、ダニやカビが繁殖しやすくなってしまいます。
退居の際にはがして初めて床一面のカビに気づくなんて事態にもなりかねません。
カビがひどくなるとフローリングや畳の奥深くにまで根を伸ばし、取れなくなってしまう場合があります。
その場合賃貸だと追加でクリーニング代や修繕費用を請求されてしまったりします。
この方法をとる場合は、必ず定期的にコルクマットの下の掃除も行うようにしましょう。
遮音シートとコルクマットを併せて使う
遮音シートとは名前の通り遮音に特化したシートで住宅資材として売られています。
コルクマットは振動音や衝撃音の防音に向くということは説明しました。
それはつまり歩いたり何かを落としたりして固体を伝わる音です。
音の伝わり方の違いについては、
コルクマットの防音効果を厚さばかりに求めるのは間違い!でも詳しく書いているので参考にしていただけたらと思いますが、コルクマットは固体を伝わる音の防音には向くものの、例えば人の話し声や、ピアノの旋律など空気を振動させて伝わる音の防音にはそれほど効果的ではありません。
一方、遮音シートでは、そういった音についても防音効果が高いものもあります。
これはリフォームの際にも専門業者の方に使われたりもしますが、ネット通販で個人でも購入できます。
遮音シートはそれのみを使う感じではなく、下地材として使われます。
ですので、DIYでは遮音シートを敷いた上にコルクマット敷いて使われることも多く、そうすると、空気を振動させる音にも、振動音や衝撃音のような固体を振動させる音にも効果的になります。
コルクマットは自分で簡単にカットもできますし軽量で扱いやすいので、表面の仕上げや、ちょっと辻褄を合わせたいようなところに便利に敷け、DIYで防音対策をする時のマストアイテムとも言えます。
●タイルカーペットを使う
他にもコルクマットと比較して使えるものに、タイルカーペットがあります。
タイルカーペットには特に遮音効果に優れたものも多くあります。
ただ、タイルカーペットは敷く場所を選びます。
フローリングやタイルなどにペタッと吸着させて敷けるものもありますが、それは凹凸がなく吸着しやすい素材だからできることです。
畳やカーペットの上には吸着しません。
また、接着剤や両面テープを使わないと安定しないものもあります。
●防音仕様のカーテンを使う
部屋の中で音が漏れやすいのが窓です。
防音室を作ろうとする人の中には、窓にコルクマットや段ボールなどを貼り付けて防音対策をするつわものもいます。
ただ、窓が使いにくくなるのは不便です。
プロの方ならサッシやガラスを変えて防音対策を施してくださいますが、素人ではまず難しいですし、賃貸なのでそこまでするには大家さんの許可が必要になります。
ですのでそんな時手軽にできる方法として、防音仕様のカーテンを使う方法があります。
普通のカーテンと同じように表面に布が施されているものもありますが、半透明で日差しの入るようなものもあります。
防音効果がとても高いというわけではないですが、若干マシにはなるでしょう。
●その他の防音材を探す
ここまでは素人にも扱いやすいかなと思うものを特に取り上げましたが、他にも防音材は色々あり、プロ用の資材でも個人で購入できたりします。
大変防音効果が高いのに、自分でもカッターで簡単にカットしてどこにでも貼り付けられるようなものもあります。
ぜひ色々な防音材をチェックしていただけたらと思います。
ただ、プロ用のものの中には素人が扱うには危ないものもあります。
必ず注意事項をチェックしたりお店の人に尋ねたりして使うようにしましょう。
②部屋の一部に防音室を作りこむ 難易度★★☆
防音ボックスのような設置型の防音室を部屋の一部に作りこむことも自分でできなくはないでしょう。
一室を防音仕様にするよりも、防音効果の高い防音室が作りやすくなります。
DIYの得意な方なら、木材を組んだところに先ほど紹介したような防音材で、壁、天井、床、ドアを作りこむという方法もあります。
他にも、ロフトベッドを使って、その下の部分を防音室に仕上げていくという方法もいいでしょう。
これだと枠はあるので、そこに何かしらの金具を使ったりして壁などを固定していけばいいので楽だったりします。
ただ、やはりコンセントや照明などの電気系統や、エアコンなどの空調に対して工夫が必要になるでしょう。
騒音は建物自体の構造に影響される
いくら防音室を作っても騒音の伝わりやすさは建物自体の構造に大きく影響されます。
詳しくは下の記事に説明しています。
簡単に説明しておくと、RC造(鉄筋コンクリート造)SRC造(鉄筋鉄骨コンクリート造)だと防音効果が高くなりますが、それでもすべての音が完璧に防音できるというわけでもありません。
木造や鉄骨造だと音が伝わりやすく、音によるトラブルも起こりやすいと言えます。
賃貸で楽器OKと書いていても
ここまで読んでいただいて、中には「自分でできる防音で十分だ」とか、「組み立て式の防音ボックスがちょうどいい」とか反応も色々だと思います。
でも、やっぱりガッツリ防音がしたいという場合は、「防音室のある物件に引っ越した方がいいかも」と思われる場合もあるのではと思います。
で、実際に例えば楽器を弾ける物件を探そうと思うと、「防音室あり」や「楽器相談可」などと書かれた物件もあったりします。
「防音室あり」となっている場合は、24時間いつでも楽器を使える場合が多いですが、「楽器相談可」などちょっと含みのある表現になっている場合は、少し注意が必要になります。
例えば、特に防音に配慮された造りの建物であるというわけじゃなく、住民相互に理解があるというだけという場合があったりするからです。
多少うるさかろうとお互いさまというわけです。
大変大らかで魅力的な物件ではありますが、例えば、夜中にトランペットを吹かれてしまったら多くの住人が寝れなくなるでしょう。
ですので、そういった物件の場合、楽器を使用してもいい時間帯の制限が設けられていたりします。
いつでも好きな時に楽器を弾いたり、大音量で音楽を聴いたりしたいといった場合は、「防音室あり」の物件が一番いいのは言うまでもありません。
しかし、それだとどうしても家賃は高くなり、「楽器相談可」などの物件だと安い傾向にあります。
まとめ
賃貸の部屋は大家さんにお借りしているものですし、ほとんどの場合アパートやマンションなどの集合住宅になります。
特に防音に気を使いたい住まいだと言えますが、防音室のような特別な仕様を望むのは借りる側の都合だけではどうにもしにくかったりするのです。
木造や鉄骨造の物件だとより音も伝わりやすいので一層気が抜けません。
防音室のある賃貸だと最高ですが、家賃は高くなりますし、思い通りの立地に必ずしも見つかるわけでもありません。
ですので、組み立て式の防音室は大変重宝するでしょう。
ただ、やはりいいものは高額になります。
できるだけ低予算で抑えたい場合は、自分で作りこむ方法をとることになります。
その場合だと、部屋の一部分に防音ボックスのように作りこむ方が防音効果は高くなります。
日常を彩る音
話は変わりますが、以前、私は、外国の方が多く住まれている賃貸住宅に住んでいたことがあります。
よくそこかしこから音楽や、ギターの音、話し声などが聞こえていました。
休日にでもなると、お友達同士で集まって大きな音楽を鳴らし、みんなでゆったり過ごされます。
踊っておられる方もいました。
気ままにギターに合わせて歌う声なんかも聞こえてきて、正直、ハッと気づかされることの多い日々でした。
みなさん、大らかに気ままに日常を楽しんでおられるのです。
住民の中には「うるさい」と感じる方もいらっしゃったかもしれませんが、私は心からうらやましかったです。
大らかな未来が来るまで
騒音は日本の社会では大きな問題に発展することが多く、みんな息をひそめるようにして生活するのが当たり前になっています。
幼稚園や保育園の賑やかな子どもたちの声まで、切実にうるさく感じられる方もいらっしゃいます。
夜中など常識的に静かに過ごしたい時の爆音や、夜中でなくてもあまりにも大きな音を立てるものについては「うるさ~い!」と私も声を荒げるでしょうし、
もちろんしっかり防音対策をすべきだと思います。
しかし、そうではないのなら、もう少し大らかな感覚があってもいいのではと思います。
つまり、あんまりギスギスしないで音を楽しみたい!そんなことを実は自分にも人にも求めていたりもします。
そんな大らかな未来を夢見ながら、それまでの間はしっかりとした防音対策にいそしもうと思います。